引き裂かれそうな心を抱えたまま、それでも縋ってしまう不確かな絆が、取り返しのつかない狂気へと二人を引っ張っていく。蓮は、あの瞬間に何を思ったのだろうと思わせる。
雨の中で泣き崩れた樹里の姿が、まだ胸に残っている。鉄平への怒りも、蓮の切なさも、全部まとめて心を揺さぶられた。樹里、どうかもう自分を責めないで。あの姿を思い返すたび、胸がきゅっと痛む。幸せになってほしい――今はただ、それだけを願ってしまう。
11話|鉄平の暴言と口紅が樹里を砕く
罪悪感すらなく、樹里に冷酷な言葉を吐き捨てる鉄平。
蓮が樹里の首元を見ても、変に勘ぐったりせず、「傷が気になるから絆創膏を貼ろう」と優しく受け止めるところ、もう胸がきゅっとなった。樹里にとっては何でもないやり取りじゃないんですよね。誰かから何気ない連絡をもらうことも、それに返事をすることも、今までほとんど知らなかったんだもの。だから蓮が「返事がないと自分は寂しい」と伝えることで、樹里が初めて誰かと繋がっている実感を知っていくのが、すごくいい。
そして蓮から「自分のしたいことをしていい」「誰かのために無理をしなくていい」と言われて、樹里が一日かけて考えるのがまた切ない。そこで選んだのが、自分のためにバラを一本買うこと。たった一本よ?でも樹里にとっては、ものすごく大きな一歩なんですよね。自分のために使うことを許したお金で、部屋に花を飾る。それだけで部屋の空気まで明るく見えて、嬉しくなって写真を蓮に送る樹里……ああ、こういう小さな幸せをもっと知ってほしいよ。
なのに鉄平が、そのバラを見た途端に苛立つのが本当に苦しい。樹里が少しだけ自分のために生きようとしたことを、まるで許せないみたいに扱うんですよね。しかも樹里が体調を理由に距離を置こうとすると、鉄平は心ない言葉をぶつけてしまう。樹里が天井を見つめたまま何も言えなくなるところ、胸が痛すぎる。せっかく蓮とのやり取りで少し心が動き始めたのに…。
そして蓮よ。女性たちに囲まれても、あの不気味なくらい静かな笑み。偶然なんてない、すでに結末は見えている、とでも言うような考え方が怖い。優しく樹里に寄り添う蓮と、どこか冷たい目をした蓮。同じ人なのに、また別の顔がちらっと見えた感じがする。
そして最後。鉄平のシャツに残っていた鮮やかな口紅。えっ……待って。これ、もう樹里が気づいてしまうでしょう。あれだけ自分を責めて、夫を信じようとしてきた樹里の目の前に、言い逃れできないものが出てきてしまった。もう、ここからどうなるの……!
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12話|口紅の痕を思い出した樹里の絶望
蓮は、彼女が涙する結末をすべて見通して冷たく微笑んでいた。。
樹里が口紅の痕を思い出して、グラスを割ってしまうところからもう苦しい…。頭では「きっと何かの間違い」と思いたいのに、心はもう分かってしまっているんですよね。自分は化粧なんてしない。だったら、あれは誰のものなの?そう考えれば考えるほど、これまで鉄平に言われてきたことまで一気に押し寄せてきて、もう息が詰まりそうになる。
しかも樹里、そこで鉄平を責めるんじゃなくて、「大げさに考えているだけ」と自分のほうを疑ってしまうのが本当に切ない。ずっと我慢することに慣れすぎて、自分の傷まで小さく扱ってしまっているんだよね。夜勤中も、過去の苦しさや子どものことまで思い出して、「私たちは…」と立ち尽くすような気持ちになるの、分かるよ…。ここまで頑張ってきたのに。
そんな樹里を外から蓮が見ているのも、なんだか胸がざわついた。ヘルメットをかぶったままじっと見て、それから店に入ってくるんですよね。しかもスマホに「名前で呼んでもいい?」と表示して見せるって、蓮、そこ!?今それを聞くの!?でも樹里にとっては、そのくらいの他愛ないやり取りが救いになっているのかもしれない。
樹里が冗談で「叱られたいなら、手を挙げて立っていなさい」と返したら、本当に手を挙げる蓮も可愛いんですよ。ちゃんと従うの!?しかも笑ってるし。もう、この人どこまで樹里に構ってほしいのよ……。
さらに、お腹が空いていると知った樹里が、自分だって余裕がないのに食べ物を買ってあげようとする。ここでもまた樹里の優しさが出るんですよね。でも蓮は「自分の食事代くらいある」と笑って、その代わり樹里に一番おいしいものを選んでほしいと言う。ああ……こういうところなんだよ。蓮はただ樹里に何かを与えたいだけじゃなくて、樹里自身に選ばせようとしている。
…と思ったら、最後に左手首のタトゥーが見えるの!?えっ、待って。蓮、まだ隠しているものがあるの?優しく笑う青年の腕に刻まれたものが、急に別の顔を見せてきた感じがして、胸がぞくっとした。
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13話|樹里が蓮の手首の傷に触れる瞬間
蓮は樹里の震える声に気づきながら、嘘をつこうとして、でも最後にはつけなかった。
蓮の手首にあるタトゥーだけじゃなく、その下に薄く残っている傷まで樹里が見つけてしまうの。しかも自分のことより先に、「どうしてこんな傷があるの」と心配してしまうんですよね。もう、樹里って……どうしてそんなに人の痛みに敏感なのよ。
蓮も、樹里が泣きそうな顔で自分を憐れむのを見て、わざと「事故でできたものだ」と嘘をつく。ぞくっとした。樹里に心配されることを、少し嬉しいと思ってしまったのかな。でも同時に、その優しさに触れてしまったことで、蓮自身も複雑になっている感じがする。傷も、タトゥーも、突然現れるところも、まだまだ謎だらけなのに、樹里にとって蓮といる時間が鉄平のことを忘れられるひとときになっているのが、すごく大きな変化だと思う。
一方で鉄平は、亜里沙から結婚したいと言われて戸惑っているのよね。遊びのつもりだったのに、若くて裕福な彼女に惹かれてしまう。でもそこで思い出すのが、昔、樹里と一緒に思い描いていた温かい家庭なんですよね。子どもがいて、安心して暮らせる家。あったはずの夢を、貧しさや現実のせいにして諦めたことにしている。でも…本当にそれだけだったのかな。
そして夜の蓮。屋上から街を眺めながら、樹里が自分のタトゥーではなく、その下の傷を気にかけてくれたことを思い出しているのが切ない。樹里が見てくれたのは、派手な外側じゃなくて、その奥にある痛みだったんだよね。だからこそ蓮の中で、樹里への気持ちがどんどん大きくなっているんだろうな。
しかも、樹里の関係が終わるまで待つつもりだったのに、もう待てなくなってきている。ああ、これはいよいよ何かが動く…と思ったところで、最後に亜里沙からの着信。眠っている鉄平のスマホが鳴り続けて、樹里はその音を聞いている。
樹里、お願いだから今度こそ自分の心を疑わないで……。もう、真実から目をそらさなくていいよ……!
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14話|鉄平の会社へ走った樹里が真実を突きつけられる
返信のない沈黙の中で、蓮は胸の奥で呟く―もう待てないにゾクッと。
えっ、ここで樹里が鉄平の会社まで行くの…!もう胸が苦しくなってしまった。あれだけ「大げさに考えないように」と自分を抑えてきたのに、とうとう不安の方が勝ってしまったんだよね。蓮から届いた言葉をきっかけに、自分のために一歩踏み出した樹里なのに、その行き先がよりによって鉄平の会社なのが切なすぎる。
しかも、結婚した頃の鉄平との思い出が入ってくるのがまた苦しいんですよ。お金がなくても、いつか綺麗なドレスを着せてあげると言ってくれたこと。あの頃の樹里にとっては、本当にそれだけで幸せだったんだろうなって。だからこそ今、鉄平の気持ちが自分から離れているかもしれないなんて、簡単には認められないよね。過去の優しさまで嘘だったことにしたくないんだもの。
そして蓮…。樹里から返信がないだけで、あんなに静かに思い詰めているのが怖い。表向きはいつもの穏やかな蓮なのに、その奥では何かを決めているような気配が濃くなっていて、もう「年下の優しい青年」というだけでは見られなくなってきた。
でも、今回一番苦しかったのは、樹里が会社で「家族です」と名乗るところ。鉄平にとって自分が何なのか分からなくなっているのに、それでも夫を探すためには妻として動くしかないんだよね。そして返ってきたのが、まさかの「今日は残業じゃない」という言葉。いや、待って。じゃあ鉄平はどこにいるの?
ここまで来たら、もう樹里自身も薄々分かってしまうんじゃないかな。怖いよ……でも、知ってしまうんだろうな。蓮の言葉に背中を押されて走り出した樹里が、いったい何を見つけてしまうの…!
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15話|鉄平の暴言で樹里の心が折れる夜
静かに影が動いた。蓮は、いい子の仮面を捨てる決意を固めていた…ああ、ついに決めたんだね。
いや、もう樹里……どうしてそこまで鉄平を信じようとするの。胸がぎゅっとなる。浮気しているかもしれない証拠を確かめに行ったはずなのに、待っていたのは安心させてくれる言葉じゃなくて、樹里を責め立てる鉄平の態度。しかも、幼い頃の記憶まで呼び起こされて、怖くて声が出なくなるなんて…それでも化粧品のことだけは聞こうとした樹里、本当に精一杯だったんだろうな。
なのに鉄平は、疑っている樹里がおかしいみたいに扱う。いや、そうじゃないでしょう…。樹里が知りたかったのは、ただ「大丈夫だ」と言ってほしかっただけなんだよね。自分が信じてきた夫婦の時間を、まだ守れるのか確かめたかっただけなのに。
そして蓮ですよ。ここで完全に何かが変わった感じがする。今までは樹里のそばにいながら、踏み込みすぎないようにしていたのに、彼女が鉄平のことで傷ついている姿を見て、とうとうその立場を捨てるんだもの。樹里を傷つけた相手への怒りと、自分を見てほしいという気持ちが、もう分けられなくなっているように見えて怖い。でも同時に、そこまで樹里への感情が膨らんでいたのかと思うと、ぞくっとしてしまう。
そして雨の中で泣き崩れる樹里……。あんなに毎日を耐えて、働いて、鉄平のために動いて、それでも最後に「仲直りしたい」と思えるのが切なすぎるよ。結婚記念日に食事をして、謝って、もう一度やり直したい。樹里が欲しいのは、たぶんそんな小さな幸せなんだよね。
だからこそ!蓮が何事もなかったみたいにコーヒーを差し出して、明るく声をかけてくるのが刺さる。樹里の心が鉄平に縛られているその瞬間に、蓮がまた現れるんだもの。もう、これ以上どう揺さぶるの……!蓮、その笑顔の奥で何を考えてるのよ……。
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