鉄平との日々を引きずる樹里の心に、少しずつ新しい風が入り始めます。蓮と過ごす時間の中で、これまで押し込めていた感情を吐き出し、樹里は自分自身の気持ちと向き合うことに。けれど、かつて鉄平と育んだ思い出は簡単には消えず、過去の温かさと現在の寂しさが彼女を迷わせます。そんな樹里を蓮は急かすことなく支え続け、ふたりの間にはこれまでとは違う空気が流れ始めます。
26話|樹里が蓮の前で涙を流し鉄平への想いを手放す夜
蓮が樹里を高台へ連れ出し心の内を吐き出させる
樹里にとってかなり大きな一歩だったんじゃないかな。蓮が連れていったのは、家のすぐ近くなのに樹里が一度も見たことのなかった高台。近くって‥いつから樹里を見てたんだろ?毎日家と仕事を往復して、疲れ果てて眠るだけだった樹里にとって、こんな場所がすぐそばにあったなんて…。それだけで、これまでどれだけ自分のための時間を持てなかったのかが伝わってくる。
そこで蓮が、思っていることを全部吐き出していいと促すのも優しい。樹里は鉄平への怒りや別れの気持ちを叫んで、ようやく涙を流す。ずっと我慢して、飲み込んで、何でもない顔をしてきた樹里が、蓮の前では泣けたんだよな。しかも最後には蓮へ感謝を伝える。この一言、蓮にはかなり響いただろうな…。
そして帰り道、樹里が蓮の背中に寄りかかるところも印象的だった。傷を抱えているのは蓮のほうなのに、支えているはずの樹里がいつの間にか蓮に頼っている。これ、二人の関係がもう一方通行じゃなくなっている証拠に見える。樹里にとって蓮は、ただの年下の知り合いではなくなってきているんじゃないかな。
さらに今回は、蓮の周囲にも不穏な動きが出てきた。譲二は会長から監視を命じられているものの、蓮の行動を知るほど「これは単なる遊びじゃない」と感じ始めている。蓮自身が何を考えているのか、そして何をしようとしているのか…ここが本当に怖い。
そんな中で、樹里は蓮のためにクマのぬいぐるみを完成させようとしている。彼女の気持ちがどう繋がるのかも気になるところ。
そして最後に届いた、蓮からの初めての「今日は行けない」という連絡。たったそれだけなのに、樹里の胸に不安が広がっていく。毎日会うことが当たり前になっていたんだな……。蓮が来ない夜に初めて気づいた樹里の寂しさが、二人の距離の変化をはっきり感じさせるようだった。
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27話|鉄平の帰宅、そして樹里が初めて蓮を頼った夜
鉄平の帰宅に動揺する樹里。初めて蓮の手を取った
鉄平、戻ってきたか……。しかも家に入って、樹里がいない間もきちんと整えていたことに安心しているのが、なんとも身勝手なんだよな。自分が離れていたのに、帰ればちゃんと自分の居場所があると思っている。樹里がどんな気持ちでこの家を守ってきたのかなんて、ほとんど考えていないんだろうな。
そしてクマのぬいぐるみを見つけて、樹里が寂しさを紛らわせるために買ったものだと勝手に決めつけるのも苦しい。実際には蓮のために選んだものなのに、鉄平はそこまで知る由もない。この小さなぬいぐるみが、二人の関係を象徴しているようにも見えてしまう。
一方、蓮は実家で兄と再会。こちらはこちらで空気が重すぎる……。兄から向けられる敵意を、蓮が淡々と受け流しているのが逆に怖い。もう昔からこういう関係だったんだろうな。さらに会長まで登場し、女性を巡って兄を問いただす。蓮の家庭には、まだまだこちらが知らない事情がありそうだ。
そして樹里が帰宅すると、そこには鉄平の靴。嫌な予感しかしない。案の定、鉄平は自分の立場を当然のように主張して居座り、樹里を傷つける言葉まで重ねてくる。ここで樹里が以前のように黙って耐えず、はっきり追い出そうとするのは大きな変化だと思う。怒りをぶつけてでも自分の場所を守ろうとしたんだよな。
それでも鉄平が去ったあと、樹里は震えてしまう。強くなったわけじゃない。怖いものは怖いし、傷つくものは傷つく。それでも、そんな樹里の頭に浮かんだのが蓮だったことが何より大きい。以前なら鉄平に縋っていたかもしれないところで、樹里は初めて別の誰かを頼ろうとした。
そして震える手で電話を取る。ここ、かなり胸にくる。樹里が鉄平ではなく蓮の名前を選んだ瞬間、彼女の心の中で何かが確実に変わったんだなと感じたわ。
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28話|樹里が蓮に求めた一夜の友情
樹里の一言で駆けつける蓮の優しさと不穏な本心。
樹里から突然電話が来た瞬間、蓮が迷わず車を走らせるところ、もう…ここで彼の気持ちの強さが一気に出てる。譲二が不安そうに蓮の行動を探ろうとしても、蓮は笑ってかわすだけ。しかも、その裏ではまだ「その時ではない」と冷静に考えている。この人、本当に何を考えているのか分からない。優しいのに、その優しさの奥に妙な怖さがあるんですよね。
そして樹里‥ひとりで夜道に立って、わざわざ蓮を呼び出してしまったことを謝る姿が切ない。もう鉄平には頼れない。それでも誰かにそばにいてほしい。その相手として、無意識に蓮を選んだことが大きいと思います。しかも「今日だけ友達になって」と頼むのが、樹里らしくて苦しい。蓮が冗談めかして対価を求めた結果、樹里が本気で千円札を渡してしまうのも、二人の温度差が絶妙すぎる。
屋台で恋人と勘違いされたとき、蓮がさらっと自分の片思いだと明かすのもキュン。樹里は真っ赤になるし、こっちは「言った!言っちゃった!」となる。なのに樹里の心にはまだ鉄平との思い出が残っている。壊れてしまった今だからこそ、昔の輝きが余計に美しく見えてしまうんですよね。
そして蓮の兄も、嫉妬と劣等感をむき出しにしていて不穏。家族側の問題まで動き始めたことで、蓮と樹里の関係だけを見ていられない空気になってきました。
それでも最後に残るのは、鉄平との思い出ではなく、今夜そばにいる蓮の存在。樹里の心が、ほんの少しずつ別の方向へ動き始めているのが感じられて、なんとも切ななかったな。
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29話|樹里と鉄平が出会った青春の始まり
不器用な二人が少しずつ距離を縮めた青春の記憶。
いやもう、ここで一気に時間が巻き戻るの、しんどい。今の鉄平を知っているからこそ、昔の鉄平があまりにも違って見えるんですよ。町では目立つし、ちょっと生意気で、不良っぽい。でも、おばあさんの荷台を毎日のように引いてあげたり、大人たちから妙に可愛がられていたりする。そういう「憎めない少年」だったんだなって。
そして樹里も、実は最初から鉄平を知らなかったわけじゃないんですよね。町で一番目立つ存在だった鉄平をずっと見ていた。でも自分から近づくことはできない。そんな樹里に鉄平のほうからグイグイ来る。この勢いが若さそのもの。まだ付き合ってもいないのに、もう彼女になる予定だと言い切っちゃう鉄平、強すぎる。しかも携帯を持っていない樹里のために働いて、自分との連絡専用みたいに渡してくるのも、今の鉄平からは想像できないほど一途です。
一方で、樹里の家庭では父親の怒鳴り声が響いている。だからこそ、暗い布団の中で鉄平から届いたメッセージを見て、泣きながら笑う樹里の姿が本当に切ない。あの頃の彼女にとって、鉄平はただの恋愛相手候補じゃなくて、苦しい毎日の中に差し込んできた光だったんでしょうね。
そして鉄平自身も、両親や祖母を失った「かわいそうな子」として町の人に見られていた。明るく振る舞っていても、彼の中にも大きな孤独があったんだと思うと、現在の二人の関係が余計に苦しくなる。
最後には沙由美先輩の影や、樹里が別の男子と歩いていたという話まで出てきて、もう青春の甘さだけでは終わらない気配が濃くなってきた。二人の始まりはこんなに眩しかったのに……だからこそ、今の結末を知っている身としては、ただただ胸が痛い。
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30話|鉄平が樹里を支えた青春と蓮に向けた樹里のキス
鉄平を忘れられない樹里の心に、蓮の存在が少しずつ入り込んでいた
昔の鉄平と樹里を見てしまうと、今の二人の関係が余計に切なく感じられた。樹里が鉄平を長いあいだ忘れられなかったのも、ただ惰性で一緒にいたからじゃなかったんだなと思う。あの頃の鉄平は、樹里にとって自分を気にかけてくれる大切な存在だった。
学校で樹里が周囲から追い詰められたとき、鉄平が助けに入ったことも大きかった。帰り道では自分も傷ついていたのに、樹里を安心させようとして明るく振る舞っていた。どうして自分に優しくするのかと聞かれて、鉄平が顔を赤くして答えられなくなるところなんて、もう完全に樹里を意識していたんだろうな。そこで樹里が初めて気持ちを伝えたのも、二人の関係が始まる瞬間として忘れにくかった。
ただ、そんな青春の記憶があるからこそ、現在の樹里が鉄平との思い出に苦しんでいるのも分かる。屋台で蓮と一緒にいても、心の奥にはまだ鉄平がいる。蓮もそれを感じ取っていて、嫉妬しながらも樹里への好意を隠そうとしない。そのまっすぐさが、なんとも蓮らしかった。
しかも樹里が蓮の年齢を知って驚いたあと、酔いも手伝ってどんどん距離が近くなっていく。10歳も年下なのに余裕のある蓮と、年上だから自分のほうが落ち着いているはずなのに振り回されてしまう樹里。この二人、立場が完全に逆になっているのが面白い。
そして最後……樹里から蓮へキスしてしまったのには、さすがに息をのんだ。酔った勢いだけなのか、それとも心のどこかですでに蓮を求めていたのか。たぶん樹里自身も、まだ答えを出せていないんだろうな。
鉄平との思い出は消えない。それでも蓮に心が動く瞬間は確かにあった。その揺らぎが、樹里にとってどんな意味を持つのか……静かに気になってしまった。
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